スキップしてメイン コンテンツに移動

映画 ミリオンダラーベイビー あらすじと感想


 
 
登場人物 : ヒラリー・スワンク    = マギー・フィッツジェラルド
       クリント・イーストウッド  = フランキー・ダン
       モーガン・フリーマン    = エディ・“スクラップ・アイアン”・デュプリス
 
 
 
あらすじ
 
カットの名人(セコンドについて自分の選手の止血をする人)だったフランキーは
現役を退いたのち小さなジムを持ち、トレーナーをしていた。
 
トレーナーとしても有能な彼
口癖は ”tough ain't enough" (タフだけじゃ足りない)
 
世界チャンプになれるほど実力をつける選手もいたが
フランキーが選手の身体を思うあまりの慎重な試合組みにチャンスを逃がすと思い
彼の元を離れていってしまう。
 
マギーは生まれついての貧乏でうウエイトレスをしながらボクシングという夢を追っていたが
うだつが上がらないまま年齢を重ねていた。
フランキーがセコンドについているのを見かけて、この人にコーチを受ければチャンプになれると
思い弟子入りを申し出るが、女性だということで一瞥され相手にもされない。
 
スクラップの助力もあり、なんとかフランキーにトレーナーを引き受けさせたマギーは
メキメキと力をつけて連勝街道を一直線で突っ走る。
 
そして辿り着いたタイトルマッチ
相手は反則お構いなしの無敵のチャンピオン”青い熊”ビリー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
感想 ネタバレアリ!
 
この映画を語る上で切っても切り離せないのは
 
”尊厳死”というテーマ
 
なのですが、それこそ監督の思うツボというか、
 
明らかにそれを討論させる為に脚本を書いたようにも見える。
 
僕はこの映画を公開からずいぶん経って見た。
 
アカデミー賞を受賞したとかどうとか、いろいろ話題になっていて
 
女性版ロッキーだろうと早合点してしまっていた。
 
もちろんそういう一面も持ち合わせた映画なのだが、
 
サクセスストーリーはこの映画の半分まで。
 
残りの半分は尊厳死に至るまでの苦悩が淡々とリアルに描かれている。
 
この部分が他の映画とは違うし、決して尊厳死を美化などしておらず、この映画の魅力だと思う。
 
 
クリント・イーストウッド演じるフランキー・ダンは一言でいえば嫌な爺
 
同じく自身が監督した映画グラントリノの役もそうだったが、
 
偏屈で頑固で冗談も言わない面白みのない老人
 
旧友のスクラップにも口から出る言葉のほとんどがグチと文句という始末
 
(マギーにも「そんな意地悪だから誰にも愛されないのよ(笑」と言われている)
 
しかし根はとても情の深い人物だと描かれている。
 
カットマンとして止血をし、試合を続けさせることはできても
 
治せない傷もある。だから自分の身を守ってくれという件だったり
 
練習代を半年分払ったのでマギーをジムに置いてやることにしたのに
 
デンジャーは「パンツも買えないのに払える訳ないだろ!」というすクラップの一言に
 
悪態をつくだけで、無理に追い出そうとしないところなど
 
随所にそういう優しい性格であることが伺える。
 
そして、その理由は描かれてないのだが
 
23年前から疎遠になっている娘のために毎晩祈り、おそらくはその原因である自身の罪の
 
許しを乞う為に毎日娘に手紙を書き、かかさずミサに通っている敬謙なクリスチャンでもある。
 
 
僕はクリスチャンではないし無宗教なので正確なところはわからないが、
 
キリスト教は転生を信じており(キリスト自身が転生している)
 
生きるということは辛いことである。苦難を経験することが最も尊いことである。
 
どんな理由があっても自殺をしてはならない。
 
自殺をした魂は穢れ天国には行けないという教えがある。
 
そんな彼がなぜ、最後は尊厳死を手伝ってしまうのか?ここがこの映画の肝だろう。
 
 
 
誰からも愛されない老人と、愛していた家族にさえ裏切られてしまった女性
 
そんな二人がボクシングを通じて父娘の絆と同等の関係を築いていく
 
そして二人の夢が叶う寸前のほんの一瞬、わずかな気の緩みをついて悪夢が突き刺さる
 
反則したビリーもそんなことになるなんて思ってもいない。
 
いつものようにいつもと同じく反則しただけ。ちょっとだけカッとなってはいたけれど。
 
それがわかっているから、この映画でビリーを責める描写は一切されていない。
 
 
場面変わって病院でのシーン
 
マギーがスクラップに言った言葉
 
「私の身体は一生全身麻痺で治る見込みはないんだって・・・フランクがそれをどう受け止めるか・・・・」
 
「あのときどうしてガードを下げたのか・・・あれほど自分の身を守れって言われてたのに・・・」
 
自分の身に起きた悲劇を嘆くのではなく、自分がフランキーの言いつけを守らなかったことで
 
自分の身に起きた悲劇によってフランキーが嘆き悲しみ心を搔き乱すことを心配している。
 
当のフランキーはマギーの心配通りに起きてしまった悲劇を受け止められずに
 
苛立ち当たり散らしてしまう。
 
 
マギーが死にたいと言い出すのは、自分の見舞いよりもディズニーランドを優先し、
 
娘が頑張ったことに一切の関心を持たずに、娘が稼いだお金のみに関心がある家族に
 
絶望したからではないと思う。
 
もし、マギーの家族が彼女が期待した通りの反応を見舞いで見せていたなら
 
家族に自分の財産が残るように考えただろう
 
でもそれで死を望まなくなったとは思えない。
 
彼女が死にたいと思ったのは片足を切断しなければならなくなったことだと思う。
 
いや、むしろ足がなくなったことも大きな問題ではないのかもしれない
 
ここで活きてくるのが前半でのスクラップの言葉
 
「ボクシングの魔力それは 極限の痛みに耐え、鎖骨が折れても腎臓が破裂しても
 
網膜剥離になっても戦う ”自分だけに見える夢にすべてを賭ける力” をもつ」
 
この部分 ”自分だけに見える夢にすべてを賭ける”
 
マギーはボクシングにすべてを賭け、そして自分だけに見える夢以上に輝けた
 
自分は精一杯生きたと思える。
 
寝がえりがうてずに少しづつ腐っていく身体と共にその栄光の日々が自分の記憶から消えていく
 
それが一番辛いことだ。どうか自分は精一杯生きたと誇りを持って言えるうちに殺して欲しい。
 
そうフランキーに頼んだのであって、決して自分の動かない身体に悲観した訳でも
 
家族に見捨てられた孤独から言った訳でもないと思う
 
家族もいなくなってしまったマギーはフランキーに頼むしかなかったのだと思う。
 
 
一方のフランキーは当然断ったものの、悩み続ける。
 
そして牧師に解告しにいく。
 
涙と鼻水にまみれてフランキーは心情を牧師に吐き出す
 
「マギーは死にたがっていて、自分は彼女に生きて欲しい。しかし彼女を生かすことは殺すことだ
 
この矛盾をどう埋めればいい!?」
 
そう問うフランキーに牧師は
 
「神も天国も地獄もこの際、どうでもいい!
 
あなたは娘にしてしまった罪を悔いて23年間毎日ミサに通った。その罪がなんなのかは知らないが
 
いま考えてること(自殺ほう助)に比べたらちっぽけな罪だ。
 
もしも(自殺ほう助)をしてしまったら、あなたは完全に自分を見失ってしまう」
 
はいここ。試験に出ます(笑
 
そう。フランキーはわかってるんです。
 
尊厳死が許される罪ではないということを。
 
マギーの父親が愛犬にしたことも理解できる。自分も死にゆく立場なので。
 
だからと言って許されることでなない。
 
わかった上で、マギーの願いを叶えてしまう。
 
なぜなら、精神安定剤を大量に投与され、とても生きているとは思えないマギーが
 
そういう状況でもフランキーに「私の願いを叶えて」と目で訴えてきたからに他ならないと思う。
 
その意志の強さ=頑固さに折れて、自分は地獄に落ちることになるとわかっていて
 
フランキーはマギーを尊厳死させてしまう。
 
 
 
さて、ここでもう一度言いたいのは
 
マギーは”自分だけに見える夢に全てを賭けた”んですよ。
 
だからこそ「自分は生きる為に戦った」「自分は十分に生きた」と言えるのであって
 
決して誰しもの尊厳死を認めている訳ではないんですよね。
 
僕もその昔、音楽に打ち込んだ時期があったけど、結局は「才能が」とかくだらない言い訳をして
 
夢半ばどころか歩き出す前に諦めてしまった。なにも賭けることなく。
 
そういう人間は「十分に生きた」とは言えないですよ。
 
肺癌になって毎日を地獄のような苦しみと闘いながらも、生を全うして朽ち果てるべきなんです。
 
そしてそのときはたぶんスクラップが言うように、自分の人生を悔いながら死んでいくんです。
 
スポーツでも音楽でも、ダンスでも絵画でも
 
「すべてを賭けて夢を追いかけた」人だけが、死の間際に「自分は精一杯、十分に生きた」と
 
言えるんだと。
 
 
つまりこの映画は
 

キミはマギーのように精一杯生きているかい?

もし違うならまだ死ぬときじゃないよ?

今日からでも「自分の人生は悪くなかった」と言って死ねるように頑張ってみないかい?

 
そういう意味の映画なのだと思います。
 
 
 
最後まで読んでくれた方 長々と駄文にお付き合いありがとうございました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

コメント

このブログの人気の投稿

BAND-MAID 4th single start over 歌詞を考えよう

前シングル「Daydreaming」以上のプロモーション活動をたっぷりのお金と時間をかけて したにもかかわらず、セールス的にイマイチだった「start over」 限定版が2種類と通常盤とあるので正確な集計は解りかねる部分があるとはいえ 小鳩の話からもヒットを狙ったという発言が聞ける作品としてはセールス的に失敗と言わざるを得ない まあ、理由は単純でガールズバンドが百鬼夜行する中でこの曲調はナシだろうというところでしょう。 良い曲、そして良い演奏なんですけどね。 さて、本題に入ろうと思います。 小鳩の作詞能力はどんどん成長していて「Just bring it」以降は心底良い歌詞だなぁと思える曲がある 今回「start over」の歌詞を暫く眺めていて妙なことに気づいた。 これって小鳩の気持ち? 一見すると恋人同士の絆の歌詞だしMVもそれを連想させる だが、小鳩の彩姫に対する思い、小鳩のBAND-MAIDに対する思いと思って読み解くと 面白いことになるし、僕的にとーーーーってもしっくりきた。 start over 作詞 Miku Kobato 遠く 信じた虚像 わかってたってさ (そのうち書くと思いますがBAND-MAIDは小鳩ありきのバンドで元々は小鳩はメインボーカル。それを彩姫に譲ったばかりか音楽的に小鳩はバンドの足を引っ張っていると言わざるを得ない。自分がメインボーカルのバンド「信じた虚像」自分にその才能がないこと「わかってたってさ」) even though 言い訳も 互いの夢も 矛盾に染めた (例えそうでも BAND-MAIDを続けたくて”売れたくて”自分にする言い訳もハードロックで世界制覇というBAND-MAIDの夢も小鳩自身が本当にやりたいと思うことではなく公に出す言葉とは矛盾だらけだ) 交差する表裏の感情 「好き」と「嫌い」の境界線 (そういう中で小鳩の揺れる心中 BAND-MAIDも彩姫も「好き」だけど「嫌い」「好き」と「嫌い」の境界線はどこなのだろう) いつの間に欠けてく何かを oh 追いかけて (BAND-MAID結成当時の自分の気持ちが欠けていく時もあるけど、それを追いかけて) It's very simp...

スリーデイズボディー 彼女がゾンビになるまでの3日間

前出で少しだけ紹介した映画なので、またかよ感があると思うんですが、私事情で。 完全にネタバレになりますのでご注意ください。 主役の女優さんナジャラ・タウンゼントという人なんですが、知り合いに容姿が似た方がいまして その女性に似てますねと言ってしまったんです。 ナジャラ・タウンゼントはアメリカの女優さんなんですが日本では彼女の出演作はほとんど見かけなくてググって出てくるのはこの映画くらい その知り合いの女性がググってナジャラのゾンビ化画像を見つけて(というかすぐ出るのはゾンビ化画像ばかり)「え?ゾンビに似てるってこと!?」なーんて取られると困るので、こんなところで言い訳がてらに作品の感想なんぞ書いてみようかと。 まあ、実際にその女性とナジャラは僕にとって美しく見える部分が似てると思ったんですし。 ネタバレというかそもそもこの映画ってタイトルが既にネタバレなんですよね。 ある美しい女性がいて、とある理由(後で書きます)でゾンビウイルス(?)に感染してしまって 徐々にゾンビになっていく3日間を描いた映画です。 主役のナジャラ・タウンゼントですが こんな女性です。 女優さんの見た目としては好みが別れるタイプかなとは思いますが、綺麗な女性ですよね。 繊細で危うい感じしませんか? なんていうか、意志を持って進んでいるんだけど見ていて危なっかしくて仕方がない。 小柄で華奢な容姿も相まって守ってあげたくなるんだけど、意志が強くて助言は上手く伝わらない。 触れたら壊れそうなほどの繊細さを感じる反面、なかなか自分を出さない感じ。 彼女の心からの笑顔が自分に向けられたらどれほど幸せだろうと思う男性が、ままよと告っては爆死して屍の山が累々と積み上げられている そんな感じしません? 知人の女性は顔ももちろん似てるんですが、そういう雰囲気というかそう僕が感じるところが似ている。 この映画はそんなナジャラ・タウンゼントありきの映画です。 故に映画の内容としてはそれほど何もないのにヒットしたんだと思います。 監督は主役にナジャラを起用できた時点でこの映画はほぼ成功してると思うんですが、主人公に少し(余計な)味付けをしています。 主人公のサマンサは薬物中毒と自傷から立ち直ろうとしている。そして現在の恋...

WORLD DOMINATION TOUR【侵略] 初日 川崎 Club Citta

2018年 9月12日 平成最後の夏の終わりに「WORLD DOMINATION TOUR 」の第二章【侵略】が始まった。 最初の舞台は川崎Club Citta キャパシティ1300人の今となってはBAND-MAIDには少し小さい箱 まずはセットリスト OPENING 1  DICE 2  The non-fiction days 3  モラトリアム 4  REAL EXISTENCE 5  Carry on living 6  ALONE 7  WORLD DOMINATION 8  CLANG 9  Alive or Dead 10 YOLO 11 Take me higher!! 12 start over 13 Daydreaming 14 Anemone 15 FREEDOM 16 Glory 17 On set 18 Rock in me 19 I can't live without you 20 you 21 PLAY 22 Secret of my lips 23 Choose me 24 Don't you tell me 毎回、毎回、セットリストは予想しても当たった試しがない(笑) ただ最近は曲は偏ってきた印象はある。 WORLD DOMINATION TOUR の間だけなのだろうけども。 しかしまあ、こうやってセットリストをよくよく見直すと12曲目のstart overから 14曲目のAnemoneまで続くバラッドと16曲目の新曲Gloryを除けば捨て曲なしで全力疾走しているなと思う。 18曲目のRock in meも小鳩の気持ち次第で他の曲と入れ替え可能か。 Rock in meは小鳩の成長の証とも言える曲なので当分はやるのだろうが、 久々にBeauty and the beastあたりもやって欲しいものだ。 さて、そろそろ感想を。 今回の出来は自分が参加したお給仕の中では一番の出来だと思う。 スロースターターの彩姫も1曲目からしっかり歌えていたし、歌波のミスも少なかったと思う。 なにより小鳩。 しっかりというにはまだほど遠いが、今までに比べれば相当ハモれて...